当社は、2019年10月、「RE100」(国際NGO団体であるThe Climate GroupがCDPとのパートナーシップの下で主導する強力なイニシアチブ)に加盟しました。
また「未来への挑戦」として、幅広い事業を有する当社ならではの社会価値提供による2050年目線の未来を描き、「世界が憧れる街づくり」を目指します。2050年までに、当社の事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に定めました。
自社(連結)の事業活動 <Scope1,2>
事業活動のサプライチェーン <Scope3>
当社および連結子会社では、気候変動による事業への影響を想定し、そのリスクマネジメントを強化し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取り組みを行っています。また、2020年9月にはTCFD※への賛同を表明し、その提言に基づいた情報開示を進めています。
※TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)世界経済の安定性に向けて、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立し、気候変動がもたらすリスクおよび機会の財務的影響を把握し開示することを目的とするタスクフォース。
気候変動を重要課題と捉え、リスクの特定・評価および戦略、目標について、代表取締役社長 社長執行役員を議長とする経営執行の意思決定機関である経営会議にて審議・決定しています。また、気候関連を含む環境課題およびその取り組み状況について、毎年取締役会に報告し、適切な監督を受ける体制としています。
また、年2回開催されるサステナビリティ推進会議、および東急グループサステナビリティ推進会議にて、環境課題の共有・推進・浸透および取り組み状況のモニタリングを行っています。
シナリオ分析は下記の対象範囲・シナリオ・手順にて実施いたしました。地球の平均気温が、産業革命前(1760年代から1830年代)と比較して、21世紀末における温暖化を1.5℃に抑制する「1.5℃シナリオ」では、「移行リスク」が強まり、電力コストや省エネ技術に対するコスト増加などに起因するものや、炭素税など温暖化抑制に向けた政策や規制が強化されるとともに、重要な「機会」として、省エネ技術開発によるコストの減少、環境意識向上による公共交通利用者の増加や環境配慮物件への入居志向の向上などを想定しました。また、「4 ℃シナリオ」では、「物理リスク」が強まり、災害激甚化による施設の浸水等による改修コストの増加と顧客の流出と新たな感染症により利用者が減少する世界を想定しています。以降のリスクと機会の検討・特定および重要度評価においては、「移行リスク」「物理リスク」「機会」に分けて実施しました。物理リスクへの対応は、これまでにも相当程度実施しており、今回の分析結果を含めた今後の取り組み方向性と併せて「事業における対応」を参照ください。
交通事業、不動産事業、生活サービス事業、ホテル・リゾート事業
1.5℃シナリオ(規制・対策強化シナリオ)
4℃シナリオ(現行シナリオ)
検討対象年を定めた上で、検討を行うシナリオの大枠(世界観)を設定する
検討対象年の世界観をもとに、事業におけるリスク・機会を検討
特定したリスク・機会の重要度を“実現可能性” “影響度”から評価し、事業に大きな影響が与える気候関連の事象を特定
リスクの重要度は、「各事業への影響度」と事象の「発生度」から評価しました。「各事業への影響度」は気候関連の事象の影響を受けると想定される対象事業の影響規模を分析し、「発生度」は自然災害などの物理リスクについてはIPCC※の第5次評価報告書(AR5)および第6次評価書(AR6)を参考に評価し、移行リスクについては、環境法令や炭素税の導入など将来的な政策目標・導入計画の動向や現在の政策導入などをもとに推計・分析しています。
財務的な影響は、1.5℃シナリオにおける移行リスクでは、主に電力使用量や太陽光発電の一部導入計画などに基づき算定し、4℃シナリオにおける物理リスクは、主に河川氾濫などの最大浸水深や新型コロナウイルス感染症による影響をベースに見込みました。連結への影響度は発現状況により想定影響額が変わる可能性があることから、幅をもって想定しています。
分類 | 重要なリスクの内容 | 対象期間 ※1 |
事業区分 | 影響度 (2030年時点) ※2 |
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交通 | 不動産 | 生活 サービス |
ホテル・ リゾート |
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移行リスク (1.5℃シナリオ) |
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中・長期 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 中~大 |
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中・長期 | 〇 | 〇 | - | - | 中 | |
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短・中・長期 | - | 〇 | - | - | 小 | |
物理リスク (4℃シナリオ) |
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短・中・長期 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 小~大 |
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中・長期 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 小 | |
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短・中・長期 | 〇 | - | 〇 | 〇 | 小~大 |
※1 対象期間 短期:2年以内、中期:3年~5年、長期:6年以上
※2 影響度 大:50億円以上、中:50億円未満、小:10億円以下
※IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)国連気候変動に関する政府間パネル
重要な機会は、1.5℃シナリオを中心に検討し、省エネ技術開発によるコスト減少、環境意識向上による公共交通利用者の増加や環境配慮物件への入居志向の向上などを見込んでいます。また、環境ビジョン2030で掲げる「環境と調和する街」の実現を通じた、東急線沿線を中心とした顧客および顧客生涯価値の増加による、各セグメントにおける事業成長を見込みました。
財務的な影響は、新造車両への代替や太陽光発電による電力コスト削減効果、鉄道利用への移行、環境配慮物件の賃料上昇などを推計した他、「環境と調和する街」の実現では、東急線沿線における利用者数の増加やエシカル消費などの促進を見込みました。
分類 | 重要な機会の内容 | 対象期間 ※1 |
事業区分 | 影響度 (2030年時点) ※2 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|
交通 | 不動産 | 生活 サービス |
ホテル・ リゾート |
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機会 (1.5℃シナリオ) |
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中・長期 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 中 |
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中・長期 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 中 | |
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短・中・長期 | 〇 | - | - | - | 大 | |
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中・長期 | - | 〇 | - | - | 小 | |
|
中・長期 | - | 〇 | - | - | 小 | |
|
短・中・長期 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 大 |
※1 対象期間 短期:2年以内、中期:3年~5年、長期:6年以上
※2 影響度 大:50億円以上、中:50億円未満、小:10億円以下
※3 東急線全路線再生可能エネルギー由来の電力100%での運行など
気候関連のリスクと機会は、社長室ESG推進グループをプロジェクトリーダーとし、専門家の知見の下、経営企画室および各事業部門と協働してリスク分析・対応策の検討を行い、毎年経営会議・取締役会への上程を行います。また、気候関連を含む全社リスクについては、毎年各事業・各社にてリスクの分析を実施する際に、気候関連リスクを含めて検討・評価・管理しています。
気候変動の緩和と移行リスクへの備えのため、事業活動の脱炭素化に向けた検討・推進を行っています。直面する地球環境課題に対する取り組みとして、2022年3月に環境ビジョン2030を策定し、脱炭素社会の実現のため、気温上昇を1.5℃に抑える水準を目指します。あらゆるステークホルダーとのパートナーシップで取り組み、環境に良い行動変容を後押しするサービスを提供することで、多くの方に環境貢献を身近に感じていただき、皆さまと共に環境と調和する持続可能なまちづくりを推進していきます。なお、脱炭素に関する目標設定・進捗は、「環境目標に対する達成状況」に記載のとおり、2050年までに脱炭素社会の実現を目標に掲げるとともに、シナリオ分析の結果を踏まえて、見直し・議論を進めていきます。
また、物理リスクへの対応については、気候変動リスクだけでなく地震災害やテロ対策などを含む全体の安全管理の中で投資優先順位を定めるとともに、街のインフラを担う企業の責務として、安全についての指標を定め、安全な鉄道の運行や、災害に強いまちづくりに向けた取り組みを、日々の業務を通じ行っています。
移行リスクに対して、自家発電導入・省エネ・再エネ調達に向けた取り組みを推進していきます。また、物理リスクに対しては、下記の通り、すでにさまざまなリスク対応策に取り組んでいます。さらに、近年の災害激甚化に伴い、気候変動へのレジリエンスを高めるため、各事業や事業間連携による災害対策の高度化により、リスク回避・軽減策を推進するとともに、継続して定期的な危機管理対応訓練などにも取り組んでいきます。
今後の対応 | ||
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移行リスクへの対応 |
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物理リスクへの対応 | 既存対策 |
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今後の取り組み |
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東急電鉄では集中豪雨等による浸水被害や鉄道脇の斜面崩れなどが発生した場合に、列車運行への影響を防ぐための各種対策を計画的に推進しています。
【浸水対策】
東急電鉄では2018年度から豪雨による浸水対策を進めてきましたが、東日本に大きな被害をもたらした2019年10月の台風19号を契機として自治体ハザードマップに基づき、浸水エリア内の鉄道施設状況の実測・調査を行い、以下のハード・ソフト両面からの対応策を計画的に推進しています。
(1)から(3)までの対応については沿線自治体とのホットラインの設置、浸水対応マニュアル等の整備、車庫が浸水する事を想定した退避計画策定および車両退避の検証を2020年度までに実施しており、引き続き内容を精査しつつ計画のさらなる深化を図っていきます。
(4)の施設の出入口等への浸水対策として、地下区間の換気口や駅出入口から水の流入を防ぐかさ上げや止水板設置、各機器室に防水扉を設置する等の対策を実施しています。
【土砂災害対策】
鉄道脇の斜面崩れの対策として、土砂が線路内へ流入し運行ができなくなることを防ぐため、斜面の補強工事等を計画的に推進しています。
渋谷駅周辺は、すり鉢状の地形のため、降雨時の雨水が溜まりやすいという課題がありました。近年増加している集中豪雨に備え、当社と独立行政法人都市再生機構は、渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者として、「水害に強く安全・安心なまちづくりの実現」を目指し、渋谷駅東口雨水貯留施設の整備を進め、2020年8月に整備完了・供用を開始しました(管理は東京都下水道局)。本施設は、渋谷駅東口広場の地下約25mの深さに位置する、南北約45m・東西約22mの大規模構造物で、約4,000㎥の雨水を一時的に貯水できる施設です。1時間あたり50mmを超える強い雨が降った場合に取水し、天候が回復した後にポンプで既設下水道幹線へ排水することにより、渋谷駅周辺施設の地下街への浸水被害を防止します。また、2006年に東京都下水道局により渋谷駅西口側(渋谷区神宮通りの地下約25メートル)にも同容量規模の雨水貯留管が整備されています。
二子玉川ライズ・渋谷ストリーム・渋谷スクランブルスクエアなどの大規模複合施設をはじめ当社保有物件では、自治体によるハザードマップの浸水想定を踏まえて、新築施工時にさまざまな最新の設備を設置することにより、浸水被害の防止や軽減に努めています。
渋谷ストリームは施設に隣接して渋谷川が位置していることから、氾濫前に施設利用者の迅速な避難誘導や浸水防止を実施するために、2017年に東急建設と中央大学が共同開発し、渋谷再開発の工事現場で実証実験を行った「都市河川監視システム」を導入しています。
このシステムは、気象庁が5分ごとに発表する「高解像度降水ナウキャスト」のデータを用いて、施設脇を流れる渋谷川の河川水位を予測(以下、予測水位)し、あらかじめ設定した予測水位の閾値を超過すると、注意・警戒を促すために事前登録したメールアドレスにアラートを発報します。またWeb画面では、2時間前から1時間先までの雨雲レーダー、1時間先までの気象予報情報、施設周辺の風速予測状況、気象庁が発表している渋谷区の特別警報・警報・注意報発表状況(大雨・強風、洪水・雷に限る)が表示されます。さらに、渋谷川のライブカメラや民間気象会社が提供している気象予測情報と連携しています。
東京都では、渋谷駅を含むターミナル駅周辺に広がる大規模な地下空間を有する計12地区について、地下街等の管理者、隣接ビルの管理者、鉄道事業者、地元区等から構成される「東京都地下街等浸水対策協議会」を設置し、関係者が連携して地下街等の浸水対策に取り組んでいます。
渋谷地区では、豪雨災害に対して、各施設管理者が情報収集・伝達、警戒活動、避難誘導等に関して相互の連携方法をあらかじめ定め、浸水対策を効果的に実行するために「渋谷地区地下街等浸水対策計画」が策定されています。これは地下街等における滞在者の人命保護を第一目標とし、あわせて施設内の被害軽減を図り、浸水による影響が無くなった後、速やかに施設業務が再開されるよう効果的な浸水対策の実施を目指すものです。この協議会には、当社をはじめ、東急電鉄(株)、渋谷地下街(株)、(株)東急百貨店、(株)渋谷マークシティ、渋谷スクランブルスクエア(株)、(株)SHIBUYA109エンタテイメント、東急不動産(株)などが参画しています。
二子玉川ライズでは、水防法に基づく「避難確保・浸水防止計画」を策定し、毎年、図上訓練と実地訓練を実施しています。図上訓練では、浸水流入経路の確認や浸水時の役割分担と対応方法を明確にし、実地訓練では、図上訓練に基づいて浸水時に円滑かつ迅速な行動をとるため、浸水防止対策や避難誘導を現地で実施しています。
2030年の脱炭素目標に向けて、事業特性を生かした取り組みを進めています。東急線の再生可能エネルギー100%運行に伴い、スコープ1, 2のCO2削減取り組みは進捗していますが、エネルギー利用の効率化や、安定的・追加性のある調達に向けた投資を進めていきます。スコープ3については今後お取引先さまやお客さまに働きかけ、取り組みを具体的に進めます。また、スコープ 1, 2, 3にとどまらず、創エネや蓄電池活用、新技術導入などを進めながら街の脱炭素に向けたサービスを展開し、地球環境と調和する街を実現していくことで、持続的な成長を目指します。
※CO2排出量削減目標をSPT(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)に設定
当社は、環境省が推進する2050年カーボンニュートラルおよび2030年度削減目標の実現に向けて、国民・消費者の行動変容、ライフスタイル変革を強力に後押しするための「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」(愛称:デコ活)に賛同しています。
環境省が推奨する「クールシェア」や「ウォームシェア」の生活スタイルを具現化する取り組みや、環境にやさしい鉄道の運行について、ポータルサイトで発信を行っています。
その他、賛同するイニシアチブ等についての詳細は以下をご覧ください。
なお、当社環境方針や環境ビジョン2030に定める目標に比べ業界団体の立場が著しく弱いまたは矛盾する場合は、団体に対し働きかけを行い、万一相違が生じる場合には自社の立場を優先します。