生物多様性

課題認識と対応方針

当社および連結子会社の事業活動は様々な生物がかかわりあう豊かな自然に依存していることから、自らの事業はもとより広くサプライチェーン全体における生物多様性保全を重要な環境課題と認識しています。不動産開発は特に自然環境や生態系と密接に関係していることから、法規制等を遵守した環境影響評価や環境認証の取得を実施するとともに、事業がかかわるそれぞれの地域で緑地及び親水空間の創設や生態系への影響低減に配慮し、安心して心地よく暮らせるまちづくりや事業運営に取り組み、自然環境の保全・回復に努めます。東急線沿線での事業を通じて得た知見を生かし、地方都市や海外など沿線以外の開発においても生物多様性の保全・影響低減に配慮したまちづくりに取り組みます。

取り組み目標

当社が掲げる「環境ビジョン2030」では、2030年までの具体的なアクション11を取り組み目標として掲げています。その内、循環型社会に関する一つのアクションである「自然共生」に関しては、「当社が営む事業拠点では、自然や生物多様性に配慮し、自然環境と触れ合える生活環境を提供すること」とし、「自然や生物多様性の保全、森林再生、グリーンインフラ、環境アセスメント、環境認証の取得、持続可能性に配慮した資材の調達・商品の販売」としています。

生物多様性への配慮

環境影響評価の実施

当社および連結子会社における鉄道事業および不動産事業など新規開発の実施に当たっては、開発許可申請や建築許可申請のプロセスにおいて、法令に基づく環境影響評価を実施しています。具体的には、開発対象エリアにおいて保存・保全すべき樹木等(絶滅危惧種など)の自然環境の有無を確認し、必要に応じて保全を行うとともに、自然保護等に係わる法令や条例に基づいた対応や緑化を行い、植栽のレイアウトや樹種の選定は開発地域周辺の自然との調和を図っています。

生物多様性の復元と保全

二子玉川ライズにおける取り組み

二子玉川ライズは、東急田園都市線と大井町線の二子玉川駅(東京都世田谷区)に隣接する商業施設・オフィス・高層住宅からなる複合施設(総開発面積約 11.2ha)で、二子玉川ライズⅡ-a 街区では以下の取り組みを行っています。なお、本取り組みにより「JHEP認証」AAA評価の取得しています。

①自然環境と調和したまちづくり

対象地は多摩川の北側に位置し、周辺には武蔵野台地、国分寺崖線、等々力渓谷があり、開発前の自然環境を復元し保全するため、ランドスケープ計画では地域の生命をつなぎ自然環境の創出を目指す「エコミュージアム」の考えのもと、対象地の緑地率40%超の規模の屋上庭園を配置しています。特に「地域に根付いた空間づくり」を目指し、周辺地域で見られる野草や樹木を取り入れた多摩川流域の地域性種苗による植栽計画を行い、対象地に隣接する多摩川の生態系をつなげる空間づくりをしています。

②地域の自然環境からの学び

「優れた知識は豊かな自然が育む」という理念のもとに構想した約6,000㎡の広大な屋上庭園には、多摩川の河原を再現したエリアを設け、研究者との連携の下、多摩川の河原を代表する植物であるカワラノギクを植栽するなどしています。屋上庭園は地域住民や施設利用者の“憩いの場”であるだけでなく、さまざまなイベントを通して地域の自然環境や生態系に触れることができる“学びの場”としての役割も果たしています。

ビオトープ「めだかの池」
ビオトープ「めだかの池」

池を泳ぐカルガモの親子
池を泳ぐカルガモの親子

生物多様性モデル地区公園「宮前美しの森公園」の整備

当社は、1959年より東急田園都市線沿線で「多摩田園都市」の開発を進めてきました。2006年に竣工した「犬蔵地区土地区画整理事業」は、たまプラーザ駅北口から約1kmの川崎市に位置し、その開発面積18haの地域において「自然環境への配慮」を基本方針の一つに掲げ開発を進めました。
同地区は鶴見川水系の矢上川の源流の一部にあたり、地権者の手入れが行き届いた田んぼには「ゲンジボタル」や「ホトケドジョウ」が生息する地域であったことを踏まえ、希少生物の生息地域の保全などを優先課題として、地域住民や保護団体との協議や地元小学校の協力を得ながら、緑や生物の保全と回復を図る「生物多様性モデル地区公園」として「宮前美しの森公園」を整備しました。なお、この公園は区画整理事業の竣工後に川崎市宮前区に移管しています。

東急病院における緑化

東急目黒線・大井町線の大岡山駅上※1に建つ「東急病院」は周辺環境との調和をめざし、壁面と屋上を大規模に緑化しています。特に南側と西側の壁面にはワイヤー※2を張りめぐらせ、そこに7品種4,200ものツタを巻きつけました。この緑化で直射日光を緩和でき、室内空間の消費電力を削減。建物の放熱も抑えられ、地球温暖化の防止にも役立ちます。地域に貢献する病院として、10年後さらにその先を見据えて緑を育てていきます。

  • ※1駅に直結する日本初の「駅上病院」です。
  • ※2ワイヤーの間隔は、10年後のツタの成長を予測して決めています。

地域社会との対話

東急沿線グリーニングキャンペーン

当社は、1959年より東急田園都市線の沿線における多摩田園都市において区画整理・住宅地開発事業に取り組んできました。当社が開発した住宅地の緑化を促進するために、1972年から2011年までにわたって、沿線住民の皆様に苗木のプレゼントする「東急沿線グリーニングキャンペーン」を毎年実施してきました。約40年間にわたり配布した苗木は、合計22万3千本にも上ります。

『みど*リンク』アクション

『みど*リンク』アクションは、公募によって寄せられた地域のまちづくり活動や緑化活動の企画の中から、特に優れた企画に当社が支援を行うことで、「まちづくり・緑化」をきっかけとしたコミュニティづくりを応援する活動です。この活動は、1972年から2011年まで実施した苗木のプレゼント「東急沿線グリーニングキャンペーン」を進化させたもので、2012年から開始しました。
当社が審査により選出したグループそれぞれの取り組みに対し、企画規模などを勘案し、1グループ10万円から100万円相当の物品などでの支援を行います。この活動により、「まちづくり・緑化」の取り組みが「リンク(つながり)」し、ますます“豊かで元気あふれる街”になり、未来につながっていくことを地域の皆さまと共に目指します。

河川流域の環境保全活動

1974年、当社の事業地域の中心を流れる当時の多摩川は、高度経済成長に伴う急激な人口集中によって水質汚染が深刻な問題となっていたため、多摩川流域の環境浄化を図ることは重大な責務であると考え、当社は多摩川の水質調査・研究者への研究費助成を行う「とうきゅう環境浄化財団」を設立しました。その後、多摩川の水質は徐々に改善し、1980年代にはほぼ以前の清流を取り戻しました。その後、財団は「とうきゅう環境財団」と改称し、水質に関するものだけでなく、以下の事業を通じて多摩川流域の環境保全・改善に関する研究等に対して幅広く助成してきました。

  • 研究助成事業:多摩川及びその流域の環境保全・改善に関する環境助成プログラムを実施
  • 活動支援事業:多摩川及びその流域の環境回復に関する市民講座・講演会・イベント等の活動への支援・助成、「東急財団 社会貢献環境学術賞」の贈呈
  • 啓発普及事業:「財団だより 多摩川」や環境学習副読本「ようこそ多摩川へ」を発行し流域の小学校等に無償配布

なお、2019年に「東急環境財団」は「とうきゅう留学生奨学財団」「五島記念文化財団」と統合し「東急財団」となりました。今後も変わらず、多摩川流域の環境保全と共に、社会課題の解決に貢献してまいります。

生物多様性に関する認証の取得

JHEP認証

当社と東急不動産(株)が共同事業により開発した商住複合施設「二子玉川ライズ」のⅡ-a 街区では、2014年に公益財団法人「日本生態系協会」による日本国内で唯一の生物多様性評価認証制度「JHEP認証」(ハビタット評価認証制度 :Japan Habitat Evaluation and Certification Program)の最高ランクAAA評価を取得しています。
二子玉川ライズは、東急田園都市線と大井町線の二子玉川駅(東京都世田谷区)に隣接する商業施設・オフィス・高層住宅からなる複合施設(総開発面積約 11.2ha)で、二子玉川ライズⅡ-a 街区は認証取得の評価を受けています。

いきもの共生®事業所認証(ABINC認証)

当社が事業主として参加・開発した「ドレッセ中央林間」(神奈川県大和市)では、周辺環境との調和を図り、居住者がいきものと親しみやすい環境づくりへの取り組みを評価され、いきもの共生®事業所認証(ABINC認証・集合住宅版)を取得しています。
敷地内に広大な緑地を確保して雑木林を創出し、加えて鳥類や昆虫類(蝶類)のえさとなる植物を取り入れた多彩な植栽選定(72種・約30,000本)によって、住民に自然との触れ合いの空間を提供しています。また、ウッドチップや雨水浸透トレンチの採用など、水の循環へも配慮も行っています。

生物多様性に対する監査

複合施設「二子玉川ライズ」のⅡ-a 街区では、公益財団法人「日本生態系協会」による生物多様性評価認証制度「JHEP認証」AAA評価を2014年に取得し、5年毎に更新審査が実施されており、2019年に第1回目の更新審査(監査)を受け、その結果により引き続きAAA評価を取得しています。

【事務局】株式会社ディ・エフ・エフ, 【事務局】東急株式会社 社長室 ESG推進グループ 企画担当①, 東急株式会社 社長室 ESG推進グループ 企画担当②, 東急株式会社 社長室 ESG推進グループ 社会活動推進担当, 東急株式会社 社長室 ESG推進グループ コンプライアンス・CS担当