基本的な考え方

基本的な考え方

当社グループでは、内部統制システムに関する基本方針に基づき、定期的にリスク認識の再評価、及びリスク軽減に対する取り組み状況の評価を行い、発生の回避及び発生した場合の影響最小化に向けての対応に努めております。

内部統制システムに関する基本方針(抜粋)

2.業務の適正を確保するための体制の整備に関する事項

(1) 取締役および使用人の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制
「行動規範」を周知、徹底し、適正な法令遵守体制を構築、運用するとともに、役員および従業員を対象に法令遵守に関する研修等を定期的に実施する。
コンプライアンス上の課題については、サステナビリティ推進会議において社内からの報告を一元的に受けるものとし、このうち重要なものについては、経営会議において審議を行い、取締役会へ報告する。
社内担当部署および社外の弁護士事務所に内部通報窓口を設置し、法令または行動規範に違反する行為に関し従業員および連結子会社従業員が直接通報、相談できるようにするとともに、違反行為の是正を行う。
業務の適切な実行を確保するため、内部監査の体制を強化するとともに、内部監査の結果を経営層に対し報告する。
(3) 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
安全管理上の課題については、サステナビリティ推進会議において社内からの報告を一元的に受けるものとし、このうち重要なものについては、経営会議にて審議を行い、取締役会へ報告する。
連結経営の視点に基づいて当社および子会社の重要リスクの認識、評価を行い、リスク管理方針等を経営会議において審議し、取締役会へ報告する。
事業活動に関する様々な危機管理を行い損失の最小化を図るため、危機管理の基本規程を定め、全社的な危機管理体制を整備、運用する。
(5) 企業集団における業務の適正を確保するための体制
③子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制
グループ経営基本規程に基づいて、当社は子会社に対しリスクの把握、評価、対応を行わせるとともに、東急グループサステナビリティ推進会議等を開催し、企業集団として安全管理活動を一体的に推進する。
鉄道事業における輸送の安全確保について、その整備・運用状況を、東急電鉄株式会社から、当社の取締役会・経営会議において報告を行わせる。

事業等のリスク

当社では、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある連結経営上の最重要リスクとして、「経営環境変化への対応に関するリスク」、「安全管理への対応に関するリスク」、「コンプライアンスに関するリスク」、「働き方・人材確保に関するリスク」、「長期・広範な人流阻害に伴うリスク」の5つを設定しています。

なお、事業等における重要なリスクの詳細については、下記ページをご覧ください。

経営環境変化への対応に関するリスク詳細
① 金融市場混乱・金利環境悪化・格下げ・信用不安等により、財務状況が悪化するリスク
当社グループは、これまで鉄軌道業をはじめとする各事業の必要資金の多くを、社債や金融機関からの借入により調達しているため、市場金利が上昇した場合や、格付機関が当社の格付けを引き下げた場合、ESG関連評価機関の評価が低下した場合には、相対的に金利負担が重くなったり、資金調達の条件が悪化したりすることにより、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、引き続き、資金調達の多様化を進め、金利の長期固定化や返済期限の平準化等により再調達リスクを抑制しつつ、コマーシャル・ペーパーの活用等、短期金融市場活用による機動的資金調達力の向上に取り組んでおります。
② 需要・事業性の予測見誤りにより、収益確保、事業継続が困難となるリスク
当社グループは鉄道沿線地域に経営資源が集中しており、少子高齢化や人口減少による既存事業の需要減少、生活スタイルの変化による既存の交通やオフィス・商業施設の利用減少、新たな産業やビジネスモデルの登場による既存事業の競争力低下等が起こった場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、「中期3か年経営計画」を策定し、各種施策を実施しておりますが、需要の予測値との乖離や経済情勢の変化等によって、これらの計画が予定通り進捗しない場合や、想定した収益や期待した効果を生まない場合があり、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、経営陣が各事業の業績動向、業績変化の兆候について早期に把握するとともに、対策を議論し意思決定及びモニタリングを行う等、迅速かつ適切な対応に取り組んでおります。
③ 各種市況の悪化により、工事費等、調達コストの高騰が発生し、収益性が低下するリスク
当社グループは、原材料・労務費等の市場価格動向を踏まえコスト削減を行っていますが、工事費等の調達コストが高騰した場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、バリューエンジニアリングやコストダウン、調達チャネルの多様化、継続的な工事内容の精査等、市場動向を踏まえた市況変化への対応力強化に取り組んでおります。
④ 事業展開エリアでの政権交代・税制等行政施策の変更等に伴う市況激変リスク
景気低迷の長期化による世帯年収の減少や増税等による個人消費の低迷継続、各事業における法制度の変更等が生じた場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、市況および政治・経済・法制度の変化を見据えた中長期的な運営方針を構築し、修繕・設備投資を含む適切な事業計画の策定、利便性向上や魅力的なテナントミックス、話題性の提供による施設集客力の維持向上等、各種対策に取り組んでおります。
⑤ SDGsへの対応やESG投資方針に沿った取り組みが進まないことにより、ステークホルダーからの評価・信頼が低下するリスク
当社グループは、SDGsへの対応やESG投資方針に沿った取り組みを積極的に行っていますが、この取り組みが進まない場合、ステークホルダーの皆さまからの評価・信頼が低下する可能性があります。このため、2022年3月に策定した「環境ビジョン2030」で掲げる脱炭素、循環型社会の実現に向け、TNFD対応やカーボンニュートラルに向けた移行計画の検討等、ESG評価改善の取り組みを継続するほか、ESG関連方針の取引先(サプライチェーン)へ浸透させるための取り組みを推進しております。
安全管理への対応に関するリスク詳細
① 気候変動の影響も含む自然災害等への備えが不十分で、施設損壊等によりサービスの提供ができなくなるリスク
大規模な自然災害等が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは、自然災害や感染症蔓延等において連結各社の協力体制構築などの対応力強化、気候変動に伴う営業損失・社会的影響評価を実施し、評価結果を踏まえた対策(予防・被害最小化の両面から)を図っております。
② 人為的事故の発生により、損害補償とともにサービス・施設への信頼を損なうリスク
重大な人為的事故等が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループのブランドイメージの低下やお客さまからの信頼・信用を失い、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは、安全基本方針に沿った事故、設備や情報システムの故障、食品、建設工事等の品質問題、その他の理由によるトラブルの発生を想定したさまざまな施策を講じており、東急線全駅へのホームドア・センサー付固定式ホーム柵の設置、事故等発生状況の情報収集・展開による再発防止策策定等に取り組んでおります。

※世田谷線・こどもの国線を除く

③ テロ、政情不安に伴う治安悪化により、施設損壊・お客さまの死傷等によりサービスの提供停止とともに、社会的信頼が損なわれるリスク
テロ等の外的要因による重大な事故等が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループは、テロ等の不法行為による災害、その他の理由によるトラブルの発生を想定したさまざまな施策を講じており、東急電鉄(株)所属の全車両への車両内防犯カメラの設置、駅施設や商業施設等への警備員の効果的配置、サイバー攻撃を想定した対応訓練の実施、サイバー保険への加入促進等、安全の取り組みを進めております。

※こどもの国線を除く

④ 保険料率の高騰や保険会社による引受制限等により、事故対応において保険対応ができなくなるリスク
自然災害の増加など、社会情勢の変化を踏まえた保険料率の高騰や保険会社による引受制限等により、事故対応において保険対応ができなくなる可能性があります。このため、当社グループでは、保険の補償範囲の見直し、自家保険化に関する検討に加え、事故時の保険金額請求是非の検証についても進めております。
コンプライアンスに関するリスク詳細
① 経理統制体制の脆弱さにより、会計等処理に重大なミス・不正が生じ不適正な財務諸表を公表する等、社会的信用力が低下するリスク
当社グループは、関係法令を遵守し、各国の会計基準に基づき、連結経理体制の最適化、ガバナンス強化に向け、各種施策を講じておりますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、お客さまや取引先の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、連結経理体制の最適化、国内連結各社の会計システム共通化による業務標準化等に取り組んでおります。
② コンプライアンス違反により、その損失処理とともに企業としての社会的信頼を損なうリスク
当社グループは、鉄軌道業、不動産事業をはじめとする各種事業において、関係法令を遵守し、企業倫理に従って事業を行っておりますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、お客さまや取引先の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、コンプライアンス全般および法改正対応に関する啓発や研修の実施、内部通報の対応精度向上に継続的に取り組むとともに、2024年4月に新たにコンプライアンス・リスクマネジメント委員会を設置し、コンプライアンス・リスクマネジメント体制の強化に取り組んでおります。
③ ITセキュリティを含む情報管理上の不備により、機密情報、個人情報の漏洩・紛失が発生し、その処理とともに社会的信頼を損なうリスク
当社グループは、社会的なインフラを担うシステムやサービスを提供しており、サービス提供に支障をきたすような運用中の障害、個人情報を含む機密情報の大規模な漏えい・紛失等が生じた場合には、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、設備や情報システムの故障、その他の理由によるトラブルの発生を想定したさまざまな施策を講じており、交通・決済・通信等重要なインフラを担う連結各社において外部によるセキュリティアセスメントの実施および改善計画策定等、各種対策に取り組んでおります。
働き方・人材確保に関するリスク詳細
① 生産年齢人口減少傾向の中、適切な人材資源が不足・安定的な確保ができず、サービスを持続的に提供できなくなるリスク
少子高齢化や人口減少ならびに就労・雇用環境の変化による人材流動性の高まりにより、社員流出や採用難が今後深刻化し、人員不足を起因としたサービスの低下や風評等につながる場合には、お客さまや取引先の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、会社価値の持続的向上と社員への還元とを両立する賃金・処遇改善の取り組みを進めるほか、人事制度や福利厚生制度の見直しを図ることで正社員・フルタイム勤務者に依存しない多様で柔軟な働き方を提供する等、各種対策に取り組んでおります。
② 人材資源の質的な確保・育成ができず、人材力・技術力の低下がブランド価値の低下につながるリスク
人材資源の質的な確保・育成が叶わなかった場合、事業機会の逸失、サービス品質の低下、事業運営が困難となり、ステークホルダーからの信頼を損ない、ブランド価値を毀損するリスクがあります。このため、事業独自の人材育成プログラムの構築や戦略的人事ローテーションによる持続的な専門人材育成を図るほか、不動産事業を始めとして、人材流出に伴い発生しうる当社独自の事業ノウハウ流出を防止する取り組みを進めてまいります。
長期・広範な人流阻害に伴うリスク詳細
① 地震・風水害等の自然災害により長期・広範な人流阻害が発生し、採算性が低下するリスク
当社グループの事業エリアにおいて、地震・風水害等の自然災害により、長期・広範な人流阻害が発生した場合、休業等による事業活動停止が発生し、採算性の低下につながる可能性があります。このため、TCFD提言に沿った対応を継続し、長期的な強靭化によって回避できる気候変動影響に関する営業損失や社会的影響の評価、物理的損害の事前対策と被害復旧の費用を比較、検討するほか、BCMの深度化と早期復旧に向けた継続的な取り組みを進めてまいります。
② 感染症等の外的要因により長期・広範な人流阻害が発生し、採算性が低下するリスク
感染症等の外的要因によって、長期・広範な人流阻害が発生した場合、営業制限等による事業活動停止が発生し、採算性の低下につながる可能性があります。このため、新型感染症等発生への継続的な体制整備を図るほか、リテール事業におけるECの強化など、感染症等の影響期間中にも人流に左右されない取り組みを進めてまいります。
③ 国際間紛争、為替や金利変動、インフレ等により市況が急激に変化することによりインバウンド需要が消滅し、事業収支に莫大な影響が発生するリスク
国際間紛争、為替や金利変動、インフレ等により市況が急激に変化することにより、インバウンド需要が消滅した場合、事業収支に莫大な影響が発生する可能性があります。このため、ホテル事業における消滅需要の影響を受けない新たな需要の開拓のほか、需要消滅によって発生する余剰従業員の離反防止方の検討を行ってまいります。
④ 事業エリアにおける人口減少に伴う人流阻害が発生するリスク
当社グループの事業エリアにおける居住人口が減少することにより、人流阻害が発生する可能性があります。このため、沿線の魅力づけによる居住人口の確保に取り組むほか、東急電鉄による移動創出に向けたマーケティング等、新たな移動喚起に向けた取り組みを進めてまいります。

リスクマネジメント体制

リスクマネジメント体制

当社および連結子会社では、その他経営に関する重要課題と同様に、内部統制システムに関する基本方針に則り、連結経営の視点に基づいて当社および連結子会社の重要リスクの認識、評価を行い、リスク管理方針等を経営会議において審議し、取締役会へ報告しています。
具体的な体制については「コーポレート・ガバナンス」ページをご覧ください。

有効性レビュー

以下の通り内部統制システムに関する基本方針に則り、定期的に取締役会の監督について有効性のレビューを行っています。

(3) 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
安全管理上の課題については、サステナビリティ推進会議において社内からの報告を一元的に受けるものとし、このうち重要なものについては、経営会議にて審議を行い、取締役会へ報告する。
連結経営の視点に基づいて当社および子会社の重要リスクの認識、評価を行い、リスク管理方針等を経営会議において審議し、取締役会へ報告する。
事業活動に関する様々な危機管理を行い損失の最小化を図るため、危機管理の基本規程を定め、全社的な危機管理体制を整備、運用する。

リスクマネジメントプロセス

当社および連結子会社では、定期的にリスク認識の再評価、およびリスク軽減に対する取り組み状況の評価を以下のプロセスで行い、発生の回避と発生した場合の影響最小化に向けての対応に努めております。

具体的には、毎年各部門長を責任者として、連結各社・当社各部門の事業運営に際して「想定されるリスク」を影響度・発生確率について可視化し、事業として優先順位付けをするためマップ上にプロットした「リスクマップ」を作成しています。その中から顕在化する確率や、顕在化した場合の影響度から重要性を判断し、重点的に軽減を図るべきリスクを「重要リスク」として選定し、経営計画の策定に合わせて各事業の重要リスクを反映した「リスクレポート」を作成し、経営会議・取締役会への報告を実施しています。

監査役・会計監査人

当社では、監査役の任期に関して、以下の通り定めています。
・監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

また当社では、起用会計監査人の解任又は不再任について、監査役会が決定の方針を定めることとしています。監査役会が、職務遂行状況、監査体制、独立性及び専門性などが適切であるかについての監査の方法および結果の相当性の評価から会計監査人の再任の適否を判断しています。その上で会計監査人の選任及び解任並びに不再任に関する議案を株主総会宛てに提出し決議をしています。

個別リスクへの対応

個別リスクへの対応

気候関連リスク

当社および連結子会社では、気候変動による事業への影響を想定し、そのリスクマネジメントを強化し、リスクと機会への対応について事業戦略と一体化していくための取り組みを行っています。
気候変動に関するリスクの詳細や、マネジメント体制については下記ページをご覧下さい。

事業継続に関するリスク

当社および連結子会社は交通事業、不動産事業、生活サービス事業など、多くのお客さまの生活に密接にかかわる事業を営んでおり、大規模地震などの災害発生時にも、安全性を確保しつつの事業の継続・迅速な復旧を果たすことを目的に、事業継続(BC)マネジメントに取り組んでおります。
事業継続に関するリスクの詳細や、危機管理体制については下記ページをご覧ください。

重大な法令違反の発生件数

2022年度において、本社・国内外拠点・国内外子会社における当社グループの経営に重大な影響を及ぼすようなコンプライアンス違反が1件ございました。
2023年2月、株式会社東急エージェンシーおよび同社元役員1名が、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関する入札談合(独占禁止法違反)事件に関し、公正取引委員会により刑事告発され、東京地方検察庁により起訴されております(2023年9月末現在公判中)。当社は、本件を厳粛に受け止め、当該会社を含む、当社および連結子会社における独占禁止法遵守の一層の徹底とガバナンス強化に取り組んでおります。 当社社長による連結各社に対するトップメッセージの発信、専門家指導のもとでの当社および連結子会社における類似事案発生の可能性についての網羅的緊急点検などを実施し、 2023年7月には当社および連結子会社の社長以下経営層が集まってのセミナーにおいて、独占禁止法に関する啓発を図っております。当該会社では、同年5月に「コンプライアンス独立検証委員会」を設置、原因分析とともに再発防止策の策定を進めております。今後は、セミナーなどによるさらなる網羅的な啓発活動とともに、当社および連結子会社全体での再発防止策の展開を進めることで、さらなるコンプライアンスの強化に努めてまいります。

社内外からの通報

リスク軽減に向けた社内外の通報に対する対応については、下記ページをご覧ください。