グループ会社38社から77案件(環境分野22社44案件、社会貢献分野23社33案件)の応募があり、一次審査、審査委員会を経て、下記の表彰案件に決定しました。
上田電鉄株式会社
2019年に発生した東日本台風により、千曲川橋梁の一部が崩落し、甚大な被害を受けた上田電鉄別所線。通勤通学や高齢の方の通院といった生活交通の役割に加え、観光列車としての役割も担う路線は、一部区間の運休と代行バスによる代替輸送を余儀なくされました。今回の被災により存続の危機となりましたが、地域住民の大切な交通手段を確保し地域社会の生活基盤を維持するべく、沿線地域や全国の方々と共に早期復旧に向けスタートを切りました。
設計は東急設計コンサルタントが、撤去・復旧工事は東急建設が、それぞれ行いました。橋桁の再利用を見込んで、できる限り部材を損傷させないための撤去・解体方法を検討。既設部材の転用に際しては、適切な管理基準を適用し、列車運行に支障なく使用できることを確認しました。
以前からの良好なメンテナンスは桁材の腐食を誘発させておらず桁材料が再利用できたことにより、廃棄物と事業費の削減および工期短縮を実践した他、約100年前にかけられ地元の方々に「赤い鉄橋」として親しまれてきたシンボリックな景観の千曲川橋梁を再現し後世に残す、持続可能な社会の実現に向けた方法で原形復旧を実現しました。また、地域の重要なインフラである鉄道の復旧工事において、東急グループとして地域に貢献することができ、グループ間での連携を促進した「ひとつの東急」が結実する形となりました。
たくさんの方からの多大なご支援は、工事実施可能期間が11月~5月のみという制限のある中、1年5か月・532日間での早期の復旧を果たし、2021年3月28日、全線の運転を再開。通常は1日3,000人程度の乗降客数のところ当日は約7,800人の利用客となり、全線開通を心待ちにしていた皆さんの笑顔を見ることができました。
学校法人五島育英会
株式会社東急設計コンサルタント
東急建設株式会社
五島育英会、東急設計コンサルタント、東急建設は、東京都市大学世田谷キャンパスにおける施設再整備計画の一つ「新7号館」の新築計画にあたり、環境配慮の観点から、以下の施策を実施しました。まず施設計画立案にあたり、昨今重視されている省エネルギー化の推進に加え、新型コロナウイルス感染拡大を勘案して特に換気機能を強化した教育環境と資産価値の向上を目標に掲げました。その上で、経済産業省の「ZEB(Net Zero Energy Building)」※実証事業に申請する前提で設計を行いました。具体的には、外壁サッシ部に外付ブラインドを採用、自然通風や自然採光を積極的に取り入れ、パッシブデザインを最大限生かしつつ、高効率機器やCO₂制御などアクティブな技術を融合することで、一次エネルギー消費量の58%削減(対基準値)を達成し、BELS★★★★★の「ZEB Ready」を取得しました。また、新型コロナウイルスなどの感染症対策の一環として「自然換気システム」も導入しました。それらの先進性が認められて令和2年度実証事業補助金に採択されました。ZEB化の難易度が上がる大規模建築物(延べ面積10,000㎡以上)においてZEB Readyを達成した新築の大学施設は全国でも2例目と希少で、大学の魅力度や価値を高め東急ブランドの向上に貢献したと考えます。
※ZEB(Net Zero Energy Building/ネット・ゼロ・エネルギー・ビル):高効率設備や再生可能エネルギーにより、年間の一次エネルギー消費量を正味でゼロとすることを目指した建築物。
東急建設株式会社
近年、サプライチェーンを含むCO₂排出への対応の重要性が高まる中、当社では、サプライチェーンで多くを占める建築資材に係るCO₂排出量を、高い精度で即時に算出できる独自のツール「積み上げ式CO₂排出量算定シート」を開発しました。これまで、多くの資材を扱う建設工事では、資材を積み上げて算定する方法は煩雑で困難とされていましたが、当社では資材メーカーへの聞き取りなどを基に独自のデータベースを策定。使用する資材ごとの排出量を高い精度で把握し、着工から竣工までに発生する全てのCO₂排出量を掲示できるようになりました。また、これまでの「工事金額から算定する方法」ではできなかった、低炭素型資材によるCO₂排出量削減効果を反映することが可能となった他、設計初期段階でCO₂排出量を把握できるため、より低炭素型の資材を採用するなど、CO₂削減に寄与するものと考えています。建設業界初の試みとして、業界のCO₂削減手法を先導していきます。
東急株式会社
東急電鉄株式会社
株式会社東急設計コンサルタント
池上駅は、約100年前に池上本門寺への参詣客輸送を目的として誕生した池上線の駅で、その歴史ある木造駅舎は長年利用者に親しまれてきました。しかし、駅構内に踏切が存在する駅舎は、安全性確保と線路による街の分断の解消に向け、橋上駅舎化が急務となっていました。駅舎改良工事と商業施設「エトモ池上」を有する駅ビル開発にあたり、旧駅舎と門前町の「記憶」を受け継ぎ発展させるため、木材の使用にこだわった温かみのある空間づくりを実現しました。多摩産材を多く使い地域の木材循環に寄与し、施設全体で14t-CO₂の炭素貯蔵量を確保した他、旧駅舎の古材「えきもく」を再活用する「みんなのえきもくプロジェクト」を実施。グループ各社だけでなく、関係各者にも理念を共感していただき、地域と共にプロジェクトを遂行。近隣の方への「えきもくベンチキット」の配布などを行いました。街なかに旧駅舎を思わせる木製ベンチが点在することで、地域の一体感も醸成することができました。
東京都市大学
伊豆急行株式会社
2021年10月と2022年1月、伊豆急行線で、鉄道車両を「走るスーパー」に仕立てて走らせる「買物列車」を運行しました。この取り組みは、普段買い物できる場所がない・買い物に難儀する「買い物難民」の問題を解決するために、東京都市大学西山敏樹研究室と伊豆急行が協働し実証実験として行ったものです。学生が中心となり、停車している列車内で食料品や日用品などの買い物を楽しんでもらうシステムを構築。仕入れや広報も学生が行いました。1回目は306名、2回目は210名のお客さまが訪れ、アンケートでは約9割の方から「また利用したい」との回答を得てニーズを実証することができました。鉄道車両を活用した独創的なアイデアは、買い物難民の救済とともに、コロナ禍で維持運営が困難となりつつある地方都市での鉄道事業の新規ビジネスモデルとしても期待されます。通信販売の増加で懸念されるトラックからのCO₂排出の削減にもつながり、社会貢献・環境分野の双方を解決するSDGsに寄与する取り組みになっています。
ベカメックス東急バス有限会社
当社は、ベトナム、ビンズン省ビンズン新都市での「ベガメックス東急」によるまちづくりプロジェクトにおいて、交通機能を担うべく2014年に設立されました。コロナ禍で公共交通機関の輸送が全面禁止となった際、ビンズン省交通局、医療局の要請を受け、一部無償の特別輸送を実施。全国から応援にきた医療団・医療学生の輸送や強制隔離を受けていた人々の自宅への輸送などを担い、2021年7月から10月の間に、延べ3,900台のバスを出動させ、10万人以上の輸送に貢献しました。特別輸送を止めないよう、万全の感染対策を講じて挑み、約80名の社員から1人の感染者も出さずに終えることができました。本取り組みは、高い社会貢献性が認められ、ビンズン省より社員全員が表彰された他、輸送中の動画が一般市民によりSNS上で拡散され、50万の「いいね!」を獲得。社員にとって、自身の仕事が社会で大きな役割を果たしていると再認識する機会となり、さらなる一体感と結束力が生まれました。
《 環境分野 》
株式会社石勝エクステリア
調整池や樹林が多く残る敷地面積約19.9haの大学跡地宅地開発において、運動場や建物、駐車場を戸建住宅289棟の宅地とし、敷地面積の約21%を残存樹林として残し再生するプロジェクトを実施しました。残存樹林を、居住者が自然を身近に感じられる森として再生するため「森に触れる」「森を学ぶ」「森を育てる」をテーマに、計画・設計、施工、管理を実施。「森に触れる(計画)」では、踏査の結果良好な二次林のポテンシャルを持つと判断し、林床、散策路の整備などを立案しました。「森を学ぶ(計画・施工)」では、生物調査の上、生き物の移動を分断しないように伐採木をチップ化して散策路に敷均するなど、生き物の営みを保護する施策を実施。「森を育てる(管理)」では、再生した残存樹林を未来に引き継ぐためには住民との関わりが重要と考え、管理組合のサポート体制などを立案しました。本件は、いきもの共生事業所認証「ABINC認証」を取得。取得を機に竹林管理や清掃活動が実施されるなど、生物多様性の取り組みへの理解が関連事業者にも広がっています。
《 環境分野 》
東京都市大学
伊豆急行株式会社
東京都市大学環境学部田中章研究室では、2010年から静岡県下田市において、絶滅危惧種に指定されているアカウミガメの保全活動を行っています。活動当初、下田市の浜がアカウミガメの希少な産卵地であることは地元住民にもほとんど知られていませんでした。そこで2011年から、産卵地であることを広く周知することを目的に、伊豆急行株式会社や環境省、静岡県、下田市、南伊豆町、下田海中水族館、伊豆海洋自然塾、伊豆半島ジオパーク推進協議会、日本ウミガメ協議会、県立下田高校などの協力を得て、勉強会やシンポジウムを開催しています。勉強会では、産卵地保全の必要性と地域経済活性化との両立について議論しています。さらに、上記団体との協働で、下田市および南伊豆町の海水浴場と伊豆急下田駅にアカウミガメ保全に関する看板やポスターを掲示し、周辺地域の付加価値を高め、伊豆急行線利用客数向上に寄与しました。東急グループ内での協働により、グループ内のSDGsに対する意識向上と対外的な企業ブランディングにも貢献しています。また、アカウミガメ産卵地保全をシンボルとしたこの活動は、地域生態系保全と新しい産業の育成など地域経済の活性化の両立に貢献する「里山・里海バンキング」という仕組みづくりにもつながっています。
《 社会貢献分野 》
瀬良垣ホテルマネジメント株式会社
(ホテル「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」)
沖縄県では、大雨や台風の影響により収穫が終わり土壌を休ませている農地から赤土が海に流れ込み、サンゴなどに悪影響を及ぼす赤土等流出対策が大きな課題となっています。当ホテルのある恩納村は、SDGs未来都市「世界一さんごに優しい村」としてサンゴや海を守るためにミツバチの研究を行う沖縄科学技術大学院大学(OIST)と協力し、海洋環境保全のための「Honey& Coralプロジェクト」に取り組んでいます。本プロジェクトでは、畑周辺に植物で植栽帯を作り海への流出を減らせるグリーンベルトと、農閑期の畑にひまわりなど花の咲く緑肥作物を植えて赤土をカバーする緑肥カバークロックを同時に行い、赤土の流失を防止。そして、その花を蜜源とする養蜂を行い、蜂蜜を販売することで資金を調達する持続可能な赤土等流出対策を行っています。
当ホテルはプロジェクトの趣旨に賛同し、蜂蜜を高単価で購入。2021年8月から、蜂蜜を使用したスイーツの販売を開始しました。その中でも「恩納はちみつシュー」は、はちみつの濃厚な味わいが楽しめると好評で、県内のメディアでも紹介され、プロジェクトの周知、蜂蜜のブランド化にも一役買うことができました。また、この連携を通して、お客さまにも美しい恩納村の環境保全に寄与していただく機会を創出することができました。
《 社会貢献分野 》
株式会社東急モールズデベロップメント
青葉台東急スクエアでは毎年、横浜市青葉区青葉台近隣中学校と高校の吹奏楽部の生徒に、一般客の前で演奏していただく「スクエアコンサート」を開催してきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により2020年3月以降、開催を断念していました。そこで当社では、校外で演奏する機会を奪われていた地域の中高生に、当施設内のコンサートホール「フィリアホール」で演奏する機会を提供しようと、クラウドファンディングを活用したコンサート開催に挑戦しました。青葉区の地域誌への掲載やSNSでの情報拡散など、多くの方に協力いただいたことで、267人の支援者から合計226万円の支援を受けることができました。コンサート開催に向けた準備作業や当日の進行についても、知見のない分野での調整事項が多くありましたが、プロジェクトメンバーが業務分担することで乗り越え、地域の中学・高校7校224名の生徒に、かけがえのない思い出をプレゼントすることができました。